「まったく、相も変わらずはしたない人だ。見えますか、貴方が先ほどからとめどなく流し続けている我慢汁が、私の手袋をこんなにも濡らしている――ああ、、また溢れてきた。本当に、どうしようもありませんね」
抑揚の平坦な、それでいて鋭い氷柱のような冷たく鋭い詰りの数々は、突き刺さるや否やたちどころにドロリと蕩け、跡形もなく熱せられた肌の上でその形を失っていく。
もはや今のフェリオにとって、罵詈と睦言、誹りと賛美の区別など皆無に等しかった。セレスの唇から紡がれる言葉であれば肌へと触れる頃には皆、同じなのだ。
彼が自身を突き放し蔑むほどに、背徳と劣情はその勢いを増して淫靡を鮮烈に彩っていく。そして被虐的な悦楽に塗れながら、いつかフェリオはみっともなく達してしまうに違いない。そしてその瞬間を、誰よりもセレスが待ち望んでいる事にも勿論気付いている。
云わばこの行為は、一種の茶番、ロールプレイに近しいのかもしれない。禁断と知りながら、不毛と知りながら――それでも、互いに求め合わずにはいられなかった。
「あ、あああァ……っ♡」
「ですが、これは貴方の持つ男としての数少ない取り柄とも言えます。その聞き分けのない睾丸から無尽蔵に生み出される生命の源、要するに繁殖しようと卵子にうじゃうじゃ群がる卑猥なおちんぽミルクを迅速かつ大量に製造が出来るという事はつまり、雄として優秀な証拠ですから」
瞬間、微かに――血を分けた肉親、それも自身の分身とも言える双子という立場のフェリオだからこそ辛うじて判別出来る程ほんの小さく――セレスの口端が弧を描いたような気がした。
表面上は冷ややかな面持ちを取り繕ったままであったが、フェリオには分かる。彼の眼差しと言葉がより鋭く冷たく尖るほど、その心が歓喜し愉悦に溺れている事実に。
「ほら、見てください。まだ射精すら出来ていないというのに、私の掌がぐっしょりと濡れて……。貴方はもしや、我慢汁だけで私の手を妊娠させるおつもりですか?」
不埒な熱に朦朧とする視界の中、見せつけるようにして眼前へと広げられた白い手袋を嵌めたままの指先が、下品にも粘着質な糸を引きながらゆっくりと広げられていく。
セレスが指摘した通り、彼の掌はもはや布地が透けてしまったのではないかと錯覚するほど粘液にて濡れそぼり、高貴な彼の肌へと吸い付くようにぴたりと張り付いていた。
薄手のシルク越しに浮かび上がる彼の指先は、男性独特の節くれだったものでもなく、かと言って女性的なひたすらに華奢で繊細な造りでもない奇妙な均衡によって象られており、それがフェリオの倒錯を余計に煽っていよいよ興奮を止められなくなってしまう。
――そもそも、何故このような状況に陥ってしまったのか。原因はほんの数分前、セレスによって齎されたとある親切心に包んだ悪意にある。
執務がひと段落した長閑な午後、珍しく彼が「紅茶でも飲もう」と言ってフェリオを自室へと誘ったのだ。
用意された琥珀色のそれは、本場の東洋からわざわざ現地にて買い付けたというダージリンである。
揺蕩う琥珀と、そこから漂う穏やかな甘い香りは、軽い疲労感に苛まれていた肉体に優しく染み込み、フェリオへと実に柔らかな安息を齎したのだが――実のところその紅茶内には、あろうことかこちらの意志に反する劣情を強引に呼び覚ます媚薬が仕込まれていたのだ。
性質の悪いことにその如何わしい薬品は無味無臭であったらしく――もしくは芳醇な茶葉の香りによって違和感を巧妙に打ち消されていたのかもしれない――フェリオは、なんの疑いもなくそれを一息に飲み干してしまったのだ。
程なくして訪れた異変はたちまち無様な肉体、それどころか思考と精神をも深く蝕み、現在のフェリオはというと最早、性欲にすべてを支配された愚かなる雄としてセレスにより一方的に乱され続けている。
「ふふ、実に無様ですね。我が弟ながら、ほとほと情けなくなります。絶頂を迎える前から私の掌の中でこんなにも大量のおちんぽミルクを迸らせて……。これではまるで、牝牛の搾乳ではありませんか」
絹を纏った掌が、よりその力を込めてフェリオのペニスを握り込む。瞬間、視界に広がった星の瞬きは紛れもなく、理性が大破した非情の様だ。明滅を繰り返しながらやがてそれらは輝きを失い、跡形もなくフェリオの中からその姿を失ってしまう。
「良いでしょう、それこそ牝牛のように貴方の睾丸から新鮮なおちんぽミルクをこの私直々に搾り取って差し上げます」
耳朶へと吹き込まれる辱めの言葉が、より一層、フェリオの中に燻り、今か今かと解放の時を待ち続けている劣情を激しく疼かせ、擽っていく。
「ああっ♡ 駄目だよ、兄さん……♡ 僕のカラダ、変だからぁッ♡」
「変、ですか。全く、己の浅ましさをそんな抽象的な言葉で片付けないで下さい。貴方の身体は変なのではなく、いやらしくてだらしがないんです。きちんと自覚なさい」
言いながら、叱るように容赦なく敏感な雁首を何度も擦り上げる濡れた手袋の摩擦が堪らなかった。
激しさを増すたびに絹手袋から発せられる水音もより一層、粘着質を帯びているような気がしていた堪れなさを覚えると同時、どうしてだか根拠なき充足感も掻き乱されたフェリオの心を満たしているような気がした。
自身がとめどなく零し続けている先走りの体液と、どこからかセレスが取り出し、大量に絹手袋を纏ったままの掌へと垂らしてみせたローションが奏でるその淫靡な調和は、鼓膜への愛撫と称しても差し支えはないだろう。
ペニスへの直接的な刺激、そして言葉による詰り。加えて、聴覚を蝕む粘度の高い擦過音――。五感のすべてで、フェリオは己の内側に潜んだ劣情の凄まじさと熱の高さを味わっていた。
それは決して自身が望んだ感覚ではなかったが、しかし。一度、体感してしまえば最後、もう二度と忘れ去ることなど不可能である。
それを分かっていて、セレスもこのような仕打ちを繰り返しているのだろう。あまりにも惨い、それでいて淫らな虐待行為だった。
「あ、だめ♡ 兄さ、溶けちゃう……ッ♡ 僕のおちんちんがドロドロに溶けちゃううううっ♡」
「掌で扱かれているだけで溶けてしまうのですか? やれやれ、実に無様なおちんちんですね。もう少し、忍耐というものを身につけては如何ですか?」
詰る言葉は相も変わらず氷のように冷え切っていたが、鼓膜を擽る彼の吐息は淫らな熱によって微かに掠れ、その興奮を隠しきれていない。それすら悦楽の一種へと化けてフェリオを貶めていくのだから、もはや理性を自力で取り戻すなど、今後二度とないのではと危惧してしまうほどにどうしようもなかった。
ただでさえここ最近は、週に三度ほど「躾」という名目でこういった不埒な情事に耽ってしまっているのだ。このまま自らの内側に潜んだ狂気――自覚する以上の性欲を大きく我儘に育てられたら最後、フェリオは四六時中、兄であるセレスを激しく求め続けるようなはしたない動物に成り下がってしまうかもしれない。
既に執務を含む日常生活には軽い支障まで出ており、性的な言葉ではないものまでがトリガーとなり、たちまちフェリオを情欲へ溺れさせんと牙を剥く始末だった。
「やだ、助けて兄さん……ッ♡ このままじゃ、僕……♡ 本当に駄目になっちゃうからっ♡ 兄さんに毎日おちんちんシコシコしてもらわないと生きていけない身体になっちゃうからぁっ♡」
発情期の治まらない犬猫のようになってしまったら、果たしてセレスはフェリオをどうするつもりなのか。寧ろ――セレスは自身の血を分けた弟を、そのような自制心のない獣へ退化させるつもりではないのかという懸念さえある。
だが、そんな彼の狂気に今更気が付いたところでフェリオにはどうすることも叶わない。禁断の交わりを一度でも受け入れてしまったら最後、後は転がり落ちるだけなのだから。
「おやおや、毎日とはあまりにも図々しい要求ですね。全く、我慢の出来ない雑魚ちんぽは手間が掛かって仕方がない。ですが、貴方のおちんちんをそんな堪え性のない我儘雑魚ちんぽに育ててしまった責任は私にも少なからずありますから……。いいでしょう、何度でもお相手致しますよ。そのおちんぽミルクを蓄えた睾丸が空っぽになるまで毎日、ね」
次の瞬間、赤く熱を孕んだ耳朶をセレスの唇が小さく喰んだ。
そして続け様、彼はこう言い放つ。
「……イけ」
端的なその一言が、フェリオの全身を電流の如く強烈に駆け巡る。
「あああああああっ♡」
自身が射精してしまった事実に気がついたのは、絶頂がひと通り通り過ぎた後のことであった。
「本当に牝牛の搾乳と変わりがありませんね。こんなにも勢い良くおちんぽミルクを吹き出して……。ご覧なさい、私の掌だけではとても受け止めきれません。今度搾乳する時は、それこそバケツでも用意しておいた方が良さそうですね」
再びフェリオの眼前へと翳された絹手袋は受け止めきれなかった白濁をぼたぼたと滴らせ、ぬらりと妖しく光っていた。彼の言葉通り、自身のペニスから吐き出された精液の量は普段と比較してあまりにも凄まじく、しかしそれでも体内に燻った劣情が未だこびりついたまま物欲しげに震えている感覚が半ば恐ろしかった。
これだけの劣情を吐き出したというのに、未だに沸き起こるこの欲求はなんなのか。それをじっくりと思案する余裕など持たされないまま、セレスによる甘く淫らな責苦は続いた。
「さて、お次は兜合わせを致しましょう」
乱れた呼吸を整える暇もなく、セレスは自身のスラックスからベルトを抜き取ると、惜しげもなく下着の中から涼しい表情に似つかわしくない、興奮の兆しを見せつけるかのように猛々しく怒張したペニスを取り出してみせた。
「したいでしょう? 兜合わせ」
「あ、あ……っ♡」
「とはいえ、貴方に選択の余地はありません。貴方の欲張りで下品な雑魚ちんぽは私が一切合切面倒を見る……。そういう約束でしたものね」
未だ快楽の余韻から抜け出せないまま、ベッドの淵でただ砕けてしまった腰を戦慄かせていることしか出来ないでいたフェリオへと、セレスは半ば伸し掛かるような姿勢で身体を預けてくる。
そして取り出した自身のペニスと、物欲しげに亀頭の先をパクパクと開閉させ続けているフェリオのペニスを一纏めにして握りこみ、先程と同じ絹手袋越しの愛撫に加え、腰のグラインドによる激しい愛撫を開始した。
「ほら、貴方も本能のままに腰を振ったらどうですか? されるがままでも十分気持ち良さそうですが、私が貴方のはしたない姿がもっともっと、見てみたいんです」
血管が浮かび上がるほどに再び膨れ上がった陰茎へと与えられる絹手袋越しの摩擦と、互いに先走りを滲ませた亀頭から雁首が擦れ合うぬるついた感触が堪らない。
極端な話をしてしまえば、互いの皮膚と性器をひたすらに擦り合わせているだけだというのにこれほどまでの快楽が生まれるとは思いもよらず、フェリオはとうとうその目尻に涙さえ浮かべ、喜悦とも困惑とも分からない激情の中で何もかもを見失う。
「ああっ♡ ダメぇ……ッ♡ 腰動いちゃう♡ 兄さんのおちんちんと一緒に擦ったら気持ち良すぎて腰いっぱい動いちゃうぅぅぅっ♡」
セレスに促されるまでもなく、フェリオは堪らず発情した子犬の如く自身の腰をガクガクとみっともなく揺らし、先走りの涙を零し続ける己の浅ましい亀頭をセレスの性器へと執拗に擦り付けていた。
「そうです、それで良い……。貴方がそうやって性欲に取り憑かれて泣き叫ぶ様は何度見ても実に愉快だ。ほら、また貴方の雑魚ちんぽが私の掌を妊娠させる為にせっせとおちんぽミルクを製造していますよ。目を開けて御覧なさい――ありもしない卵子を求めて貴方のおちんぽミルクが私の肌に纏わりついて離れません」
促されるまま、伏せかけていた双眸をどうにか開いて見下ろしてみると、先ほど手淫によって達したばかりであったにも関わらず、自覚もないままどうやらフェリオは二度目の絶頂をいつの間にか迎えてしまっていたらしい。
思わず目を背けたくなるほどにビクビクと狂ったような痙攣を繰り返すフェリオの性器から再度吐き出された夥しい量の精液はセレスのペニスまでをも節操なく汚していた。
「あぅ、ううう♡ 止まらない……♡ おちんぽミルク止まらないよ、兄さん……ッ♡ このままじゃ、本当に兄さんの掌が……っ♡ 妊娠しちゃうっ♡ 赤ちゃん生まれちゃう……ッ♡」
非常識な嬌声ばかりが零れ、浅ましい妄想ばかりが先走る。
性欲とは人間――否、繁殖を行う生物すべてに備わっている本能であったが、それが理性を上回るとこれほどまでに生命体として無様な姿を晒す羽目になるとは、なんとも理不尽なような気もするが反発する力など勿論持ち合わせてはいなかった。
むしろこの体たらくを彼が、兄であるセレスが悦んで受け入れてくれるというのなら――もはや世間体や外面など今後一切取り繕うことなく、はしたない姿だけを晒し続けることで互いの欲求を満たす行為にだけ没頭していたい。そんな堕落さえ脳裏に過ってしまうほど、フェリオは劣情に取り憑かれていた。
「ああ、また溢れてきた……。貴方の睾丸、いえ――おちんぽミルク製造工場は、実に働き者ですね。ほら、三度目の絶頂がやってきますよ」
そして再び、セレスの唇が熱っぽく湿った吐息と共に短く囁く。
「……イけ」
彼の掌が根元から先端に向かって勢いよく、睾丸に貯蔵された精子を搾り取るような仕草で扱き上げたその瞬間に再びそれは噴き上がった。
びくん、びくんと陰茎が震えるたびに溢れる白濁は未だその色濃さを保ち続けており、底を尽く気配は微塵もない。無尽蔵に生み出され続ける子種の数々は、それこそ行き場を失くしてフェリオの睾丸内にて暴れまわり、セレスの掌へと導かれ吐き出されていく。
辿り着くべき卵子などそこにはないというのに、どうしても止める事が出来なかった。
「あ、あう……っ♡」
もはや、自らが達してしまっているという感覚はない。促されるままに垂れ流し、常に絶頂感が続いているような――先の見えない、奈落へと落ち続ける絶望にも似た凄まじい快楽である。
そして今度はフェリオのみならず、セレスも同時に絶頂を迎えていたらしい。未だその硬さと熱を保ち続けている互いの陰茎、そして掌の中で二人分の精液が混じり合い、絡み合い、どろりと流れ落ちて太腿の付け根まで伝っていく感覚は粗相をしてしまった瞬間に酷似した背徳感によく似ていた。
「あっ、はァ……♡ うう、兄さん……っ♡」
助けを請うように呼び掛けると、間近から翠の鋭い双眸に射抜かれる。
「フェリオ、なにを呆けているのです? まだまだ夜は続きますよ。言ったでしょう、貴方の睾丸からおちんぽミルクを私の手で一滴残らず搾り取ってみせる――と」
瞬間、胸に広がった感情は悦びであった。
不毛な悦楽によって蕩けた心が、性懲りもなく疼きだす感覚に苛まれながらフェリオはうっとりとその瞳を眇めると、今度は自らも互いの陰茎に掌を重ね、催促をするように腰をグラインドさせたのである。


