第二話「賤ヶ岳の戦い」

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小谷城で味わった以上の地獄など、この世には存在しないはずであった。
だが今、立葉の眼前に広がる惨状は絶望という表現すら生温く、噎せ返るような血の匂いに思わず身を折って嘔吐きそうになる。

「勝家様、これは……」

足元に幾つも転がる柴田の側近と親族の亡骸は、いずれも腹を一刺しにされていた。
鮮血滴る太刀を手にしたまま、屍の山の中で立ち尽くしている勝家によって齎された悲劇だという事は、言うまでもないだろう。
そしてその凶暴な切先が、今度はその傍らへ寄り添うお市に向けられた瞬間、立葉は膝から崩れ落ち、血の海へと深く浸かった。

「やめ……ッ、お市、さま……!」

長政の為に生きると約束したではないか。
しかし、立葉の想いは絶望と恐怖にまみれ、言葉に代えることが出来なかった。
そんな立葉の心境を汲んだのか、お市はこの地獄に相応しくない可憐な微笑みをひとつ零す。

「茶々を、よろしくね」

最期の望みを託したその直後、微笑みの余韻を仄かに残した実に安らかな表情のまま、彼女はその場(ば)に頽(くずお)れた。
腹を刺し貫かれても尚、苦悶を見せなかったのは立葉への心遣いか、それとも地獄からの解放に安堵を浮かべただけなのか――。
今となっては確かめようのない真意であった。

「ここから今すぐに立ち去れ。間もなく、この城は焼け落ちる」

突き放すように命じると、勝家はお市の腹から刀身をゆっくり引き抜き、血を払った。

「それとも、我らと共に地獄へ堕ちるか」

鼻先に突きつけられた切先が、死の予感を滴らせながらぎらりと鋭く輝く。
だが、命など――。

「私には、命など……」

当の昔に、喪ったのだ。

息苦しさに悶えながら、ようやく城外へと脱出を果たした、その時である。

「修理が腹の切り、様見申して後学に仕候へ」

天守閣から勝家の低音が雷鳴のように轟く。
敵軍の見守る中、彼は炎上する城の最中でその腹を自ら十字に切り裂くと、侍臣の介錯によって実に壮絶な死を遂げた。

「私には、守れないのでしょうか……」

喪った命を蝶の羽に替え、現世に甦りを果たしたのはいつだったか。
羽ばたく度に死の鱗粉を撒き散らす、蝶化身。
立葉は己の絶命と共に生まれた物の怪なのだ。
死から生まれた蝶は、同時に死を喪う。
不死の存在でありながら、何者も死から救い出す事など出来はしない。
燃え盛る北ノ庄城を見上げつつ、立葉は思う。
お市の魂が蘇るのであれば、不死の蝶ではなく、今度は何度でも生まれ変わる事の出来る花の種であれ、と――。

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